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2.5 グラフの作り方

Excelは基本的にビジエス用に作られているので、Excelで作成したグラフを技術文書に用いるためには修正が必要である。これから、修正箇所を説明していく。

2.5.1 散布図

工学系で最も普通に使う図で、Excelでは散布図と呼ばる。 注意点としては、折れ線グラフとは違い、点のみで構成される。Excelでは、図2.13のように近似曲線を追加できる。

図2.13 散布図の作り方

それでは、修正を始めていく。

[1] サイズ

  1. グラフをディスプレイに印刷されるサイズと同じになるように表示しながら作成する
    • 拡大して作成したりすると、印刷された時の文字が小さくなりがちなため
  2. グラフタイトルを削除する
    • 論文の中で通し図番号と図題をつけるため、あると邪魔になる
  3. 凡例(グラフに含まれる各データ系列が何を表しているか示す役割)は、とりあえず「凡例の書式-凡例のオプション」から「凡例をグラフに重ねずに表示する」オプションのチェックをはずして、右の方に移動する
    • 後で位置を決めるため、じゃまにならないような位置においておく

[2] マーカーをモノクロでも区別できるように

Excelの原図はカラーで、それぞれのマーカー(散布図での点)と特性曲線(Excelでは平滑線と呼ばれる)の色が違うので区別できるが、モノクロでは区別できない。そこで、 1. マーカーの形状を変更する 2. 平滑線の色の濃さを変える 3. 理論値や計算値(シミュレーション結果)及びコンピュータやデータロガーを用いた連続測定値では、マーカーは示さないで特性曲線だけとする - 視認性のため

[3] 軸とメモリ

  • 軸に矢印は入れない
    • 軸の矢印はそのパラメータが無限まで達することを示しているが、工学的には、想定された負荷の範囲内で、設計された期間、機能を損なわないことが目的のため
  • リニア軸か対数軸かを決定する
    • 原則として、対数軸としたときに直線的に遷移する特性のときは、より広範囲のデータを扱えるため対数軸とする
  • グラフ軸の範囲は、設定したパラメータ及び測定値がはみ出ないようにする
  • プロットエリアに軸の数値が入りこまないように、他の軸との好転を設定する
  • 縦軸、横軸の線は1.0ポイント以上の太さ、黒色にする

    図2.14 軸に矢印を入れない・軸の数値をプロットエリアに入れない

[4] 軸ラベル

グラフは、グラフの中から必要な情報をすべて読み取れるように作成する。

軸には、プロットが何を表すかを読み取れるように情報を示します。

  • 軸ラベルには、測定対象とパラメータを組み合わせた名称を記す。¥
    • 良い例:信号周波数〔Hz〕、接合部温度〔℃〕
    • 悪い例:I〔mA〕
    • 量記号を定義しているときには、合わせて示す
      • 良い例:モータ駆動電流 I_motor〔mA〕
  • 単位を記入する
    • 本文中で単位を括弧で括っているときには、軸ラベルにも同じ形の括弧を用いる
      • 無次元量(単位が存在しない値)を百分率表示するときには、単位記号ではないが100倍されていることを示すために以下のようにする
        • 良い例:モータ駆動増減率〔%〕
  • 軸ラベルは、それぞれの軸の中央付近に、x軸は横書き、y軸は下から上への横書きとして配置する
  • 文字色は黒で、サイズは軸の数値より1~2ポイント大きめとする

軸の数値(軸のオプション-表示形式)

  • 軸の数値の桁数が多すぎる場合は読みやすさのために、指数を用いるか、接頭語(キロ、メガ、ギガなど)を用いる
  • それぞれの軸の数値は、データの有効数字の最小桁を下回らないように、最小の桁をそろえる
    • たとえば測定値が 0.12, 1.23, 2.34 の場合は、軸の数値を 0.00, 1.00, 2.00, 3.00(小数第二位まで)とするか、 0.0, 1.0, 2.0, 3.0 のように誤差を含まない桁までを示す
  • 数字は黒色、サイズは8ポイント以上とする

プロットエリアのフォーマット

プロットエリアのフォーマットは以下のものがある。

図2.15

どれを使用するかは指導教員と相談する。

どれを用いたとしても、論文の中でのフォーマットは統一する。

  • 縦軸と横軸(図a):目盛り線をなくし、目盛りは内向きとする
  • 枠線+目盛り(図b):目盛り線をなくし、目盛りは内向きとする
  • 枠線+目盛り線(図c):目盛りをなくして、目盛り線を縦と横の両方に入れる。目盛り線を横のみにはしない

  • 枠線は縦軸と横軸を同じ太さとして、黒色にする

  • 目盛り線は枠線より1~2サイズ細くする

[7] 凡例

  • 凡例の枠線は、目盛り線がない時はあってもなくてもいい
    • 目盛り線を用いたときには、凡例の枠線をグラフの枠線と同じか1サイズ細くして、凡例の中を白く塗りつぶす
  • 凡例は、プロットや特性曲線を覆い隠さないところに配置する
  • 凡例と特性曲線の並びがそろっているかを確認する
    • 図a,bのようにそろっていなければ、プロットエリアを右クリックして「データの選択」を選び、並び替える

ワープロに張り付ける前に

Excelからワープロにコピーする前に、グラフの枠線を消す。ペースト後では消せないため。

[9] その他

図2.16のように、凡例を使わずに、プロットエリアにそれぞれのパラメータ名を示してもわかりやすい。

図2.16 パラメータを図中に表記したグラフ

2.5.2 棒グラフ

複数郡の平均値比較には、棒グラフを用いると良い。


ここでは標準偏差を表示する方法を説明する。 1. まずは、平均値の棒グラフを作成する

図2.17 棒グラフの作り方

2. 次に、グラフエリアを選択して「グラフ要素」から「誤差範囲」をクリックする - グラフには誤差範囲を示すバーが現れる 3. さらに、「その他のオプション」をクリックする 4. 「誤差範囲」の「表示」から「標準偏差」を選択する - 誤差範囲の書式ウィンドウが現れる

図2.18 誤差範囲の示し方

5. そこから「ユーザー設定」「値の指定」を選び、「正の誤差の値」と「負の誤差の値」をいずれも「B3:C3」とする - 標準偏差が棒の頂上の上下に示される 6. ほかの図に枠線を用いているときには、棒グラフにも入れて揃える 7. 縦軸には軸ラベルと単位を記す

図2.19 枠線を示した棒グラフ

2.5.3 円グラフ

  • 円グラフには3D表示があるが、これは斜めから見るためそれぞれの比率がわかりにくくなるため、技術文書には用いない
  • 円グラフを用いるときには、データラベルに要素数を、また図題にサンプル数を、(n = 179)のように示す
    • サンプル数と構成比率を同時に把握できるようになる

      図2.20 円グラフ例

2.6 提出する前に

2.6.1 推敲しよう

書いたプログラムが一度で動くことがないように、書いた論文にも間違いは存在しする。締切には余裕を持たせて、内容を確認しよう。 書籍では、

  1. 現行から印刷用に版を起こした「初校」をプリントアウトして確認し、修正
  2. 修正した「再校」をプリントアウトして確認し、修正
  3. 修正した「三校」をプリントアウトして確認し、最終確認

する
プリントアウトして確認すると、ディスプレイではわからなかったことに気づく。したがって、書いた論文は、少なくとも三回はプリントアウトして遂行する。

2.6.2 チェックリスト

論文が出来上がったら、正しくフォーマットが守られているかを確認する。以下にチェックリストを示す。リストには、本書での項目番号をカッコで示す。

(1) フォーマット (2.3節)

  • 用紙サイズ、空白は指定されたサイズか
  • 段組、位置行の文字数、ページ内の行数は指定されたとおりか
  • タイトル、氏名は指定されたフォント、ポイントを用いているか
  • 章・節・項・目の番号、図番号、表番号、数式番号は正しく振られているか
  • 章・節・項・目のフォーマット(フォント、ポイントなど)は指定されたとおりか

(2) 本文フォーマット (2.3節)

  • 指定されたフォント、ポイントを用いているか
  • 途中で改行幅が変わっていないか
  • 段落を丸ごと字下げしていないか
  • 段落の冒頭は全角1文字下げているか(半角が混在していることが多い)
  • 本文は両端揃え担っているか(均等割り付け担っていないか)
  • 句読点の種類(。と. / 、と,)は混用していないか
  • 和文の句読点は全角になっているか
  • 欧文表記(参考文献など)の句読点は半角+半角スペースとなっているか
  • 箇条書きの語尾形式は揃えているか(体言止め / 用言度目の混在、不要な「こと」の羅列はないか)、箇条書きの句点は除いているか(1.3.3項 [2] (4))
  • 数字、変数、量記号、単位は半角になっているか

(これを見て本資料も慌てて修正したが、できてない部分もありそう)

(3) 文

  • 文の主語と述語のねじれはないか (1.5.2項、1.5.3項)
  • 述語を羅列していないか (2.2.4項7、2.2.7項[9] (3))
  • 長すぎる文 (1段組:3行以上、2段組:4行以上) はないか (1.7.1項)
  • 漢字とひらがなを適切に使い分けているか (1.6.2項)、常用漢字でないものを用いていないか (1.6.1項)
  • 専門用語は正しく記しているか (2.1.6項、2.1.7項)
  • 略語は最初に使うときに正式名称を示しているか (2.2.5項[6] (3))
  • 単位のカッコ表記がゆれていないか (2.3.3項[2])

(4) 参考文献

  • 本文中の分絵kん番号は正しい位置に挿入されているか(2.2.11項 [1])
  • 本文中の文献番号は、参考文献リストの番号と正しく対応しているか(2.2.11項 [1])
  • 文献番号のカッコは、本文中のリストで同じになっているか(2.2.11項 [1])

(5) 図表

  • 内容を適切に表す図題・表題がつけられているか (2.2.5項[4] (3))
  • 図番号は図の下、表番号は図の上にあるか (2.2.5項[4] (3))
  • 図表に関して本文中で説明されているか (2.2.5項[4] (1))
  • 配置位置は適切か (2.2.5項[4] (4))
  • 図表の中の要素名称は、本文と同じになっているか (2.2.5項[3] (5))

(6) 数式

  • 配置は指定されたとおりか(段落の中央に配置する、左端から数文字下げて配置する、など)(2.3.2項)
  • 数字、変数、量記号は半角となっているか (2.3.1項)
  • 数字、式記号は立体、量記号・変数は斜体(学術誌によっては立体のこともある)となっているか、混用していないか (2.3.2項)
  • 数式と本文とで変数の立体/斜体が違っていないか (2.3.2項)
  • すべての量記号・変数を本文中で説明しているか (2.3.2項)

2.7 本章のまとめ

  • わかりやすい文章を作るための3ステップ:
    • まず書く:第1章のルールに従って、細かいことは気にせず書き出す
    • 確認する:主語と述語の対応、論理的説明、段落構成などを確認
    • 直す:第2章で示された論文の構成に従って修正

一つ一つ直していくことが、わかりやすい技術文章を書くための第一歩となります。